今回購入した機材は、僕が幾度もお世話になっております、日本を代表するリペア・カスタムエンジニアとして業界で知らない人はもぐりとまで言われている「ゴッドハンド」 Tone Flake代表シュガー・スペクターこと佐藤俊雄さんがmixiの日記に、どえらいカスタム品を販売されるというのを拝見しました。
それは、ここ最近大きく話題となっていた、廉価かつ高性能、そしてキング・オブ・ヴィンテージイコライザー/マイクプリの「NEVE 1073」の丸コピー回路という面白いコンセプトの「Chameleon labs 7602MK2」。
しかも、10万以下に抑えた低価格が売り!
・・を、シュガーさんがフルカスタムを行い、回路などを全部徹底的に見直し、完璧なサウンドに仕上げちゃう!
しかもお値段は日本の定価価格と殆ど一緒。
ご本人曰く・・・
「通常のNEVEですら、メンテしてなければ俺にいわせるとクズだ。それをスペシャルチューニングしてきたノウハウを全投入。 これだけやればここまでの音になるのに、なぜ他のメーカーや本家AMS-NEVEはやらなかったのか?BRENT AVRILもそう。外見の復刻はお見事だったが肝心のEQのサウンドがどうしても馴染めなかった。この中国製のNEVEクローンは中の回路は徹底的にクローンなので音はかなりイケているのである。」
とのこと。。
で、なんと・・・さらーーに!
デフォルトの中国製の入力・マイクプリ用・出力用の内部トランスを・・・
なななな・・・なんと
ヴィンテージNEVEの音の決め手!と言われる、オリジナルで使われていたMARINAIRとSt.Ivesに取り替えちゃうというとんでもないカスタムを限定で販売しちゃうよ、というもの!
これは熱いでしょう!
と、思いまして、数時間悩んだあげく・・2ch分を購入決定しまして、2chマッチドペアを依頼しました。
このときの構成は、入力・マイクプリにSt.Ives、出力にMARINAIRという構成で、これだけでもかなーり素晴らしい仕様でした・・がシュガーさんより後日、悪魔の誘惑メールが・・
「入力トランスもMARINAIRにするとSt.Ivesとは別物になるのでどう?」
と。。その差額2ch分で7万円強。MARINAIRの入力トランスは昨今非常に数が少なく(当然伝説的なトランスなので)、値段が高騰しているのですが・・数日悩み、シュガーさんとお電話で話して、そのSt.IvesとMARINAIRの出力トランスの差はどれくらいなのかをお聴きしましたが、差は確実にあるということでした。MARINAIRのサウンドはSt.Ivesと比較して、よりファットかつオープンサウンドで、独特のジョリっとした味わい深い歪みと倍音が出ると・・。
そのときに聞いた話によると、St.Ivesの現在の会社名はカーンヒルなのですが、そのカーンヒルを詰め替えてカスタムするというモデルが、正規代理店でも行われています。ですが、現行のカーンヒルには、Marinairはおろか、昔のSt.Ivesにも足下に及ばないサウンドだとのこでした。つまり、本当のNEVEサウンドには到底及ばないわけですね。(無論、悪いわけではなく、NEVEのオリジナルがどれがけ凄いか、ということです)
と、いうことで・・なんか後悔したくないし、妥協するのも違うかーということで、決めました。入力・出力にヴィンテージ NEVE 1073とまったく同じMARINAIRを搭載し、マイクプリにもSt.Ivesを搭載!!
VINTAGE NEVE 1073はラッキングペアで100万円オーバー。僕の購入価格はその1073のラッキングされていない1モジュール分以下。それで、ほぼ1073のサウンドを購入できるとあらば、いくしかないでしょ!
てことで先日、カスタムが完成されたということで、受け取りにシュガーさん宅へ行きました。
到着してすぐに、オリジナルの未改造「Chameleon labs 7602MK2」とフルカスタム版とを比較試聴させていただきました。
上2機がオリジナル
下2機がフルカスタム版。シュガーさんの会社「Tone Flake」のシール有
まずは、オリジナルのライン入出力に音源を流して試聴。
ふむふむ・・・なかなか良いのでは?というサウンド。
やはりコストパフォーマンスのよいクリアで綺麗めなサウンドです。
イコライザーをオンしても、なかなかの効き具合。いいと思います。という感じ。
何も悪い印象はありませんでした。
で、次にフルカスタム版。
同じように同じ曲をライン入出力に通されて聴く。
ぬ!
ぬぬ!
ぜ、全然違う・・・・・
こ、これだしNEVEって!ていう音。
まさしくコレ。
超オープンサウンドで、押し出し感があり、中高域に独特の
ジョリっという歪み感。立体的で超クリアでヘッドホン試聴なのに
奥行き感もある。
そしてEQオンすると、なんちゅー自然な掛かり具合。
更に美味しい帯域が持ち上がる!!
これはマスタリングEQにも使えます♪
本当に素晴らしい!
もう未改造のとは、あからさまに差異があります。
そして次にマイクプリアンプの比較。
マイクプリアンプ入力にマイクをさし込んで聴いてみました。
オリジナル未改造のは、まーまーいいんじゃないでしょうか?
というサウンド。
ふむふむ。
で、次にカスタム版は・・って勝負にならん!!
ゲインも大きいんだけど、もう音の出方がまるで違う。
これこそNEVE!というサウンドです。
とにかく、近接効果が半端ではなく、それでいてファットで
パワフルでジョリっとした素晴らしい質感。
もう比べることすら、おこがましい世界です。
誰が聞いても、その差は歴然です。
すごーい。
ということで、比較とかするもんじゃないくらいに
違いすぎました。。
シュガーさんは今まで3桁を超えるNEVE機器をリペアされてきたので
そのサウンドを完全に知り尽くしていらっしゃいますが、
彼の中でもこれは完璧に合格点、とのことでした。
ということで、中身を公開していただきました。
真ん中の基盤内部が、シュガーさんの企業秘密なフルチューンが
施されているとか・・
で、手前がSt.Ivesのマイクプリのトランス。
奥がライン入力のMARINAIR。
そして音の最大の決め手である、MARINAIRの出力トランス。
いやー大満足で自宅スタジオに持ち帰りました。
で、実はこの機材のもう一つの売りがあるんです。
それはDIインプットがあるので、ギターのラインやベースのラインを
ここに入れて録音とかできちゃうのです。
で、家で試しにDIにエレキギターを入れて、音をチェック。
うほー!すごい。
やはりここもNEVEサウンド!
ズガーンとクリアで美しいサウンド!
こんなに強烈なDIは初めて!
今まで使っていた、僕のアナログEQのEMPIRICAL LABS LILFREQというのを
使っていましたが、正直DIはイマイチ。EQはとてもスムースでシルキーで
いいんですけどね。
なので、このDI機能にも凄く期待していたわけですが、バッチリでした!
ということで、今後こいつも使いまくります。
音はハッキリ言って最低でも1ch50万クラスは在ると思わいます。
スタジオのエンジニアには、当然お勧めですし、イコライザーやラインアンプとして
オーディオ愛好家の方にも、実にお勧めです!
ちなみにオーディオで使われる場合は、パワーアンプの手前の
プリアンプとしてお使いになると最高です。
最強のスタジオ機材をオーディオに入れるのも面白いと思います。
正直、半端ではない逸品ですし、今後の販売はないと仰っていますので
お見逃しなく。
※尚、現在はこのフルマリンエアタイプは部品情作りづらいらしいのですが、宮地商会(M.I.D.)にて、シュガーさんの手による近い仕様で販売されています。
http://www.miyaji.co.jp/MID/product/chameleon_labs/7602mk2tf.php